池田舞子 個展 | 猫だらけ

池田舞子(イケダマイコ)
1981年東京生まれ。多摩美術大学美術学部グラフィックデザイン科卒業。
中学生の時、美術の教科書で一勇斎国芳作『東海道五十三疋』と出会う。
猫の線に惚れ込み、以後複数回の模写を試み、更なる画風の研究を勧める。四回目くらいで『地口絵』の存在に気付き、開眼。地口の研究にも着手。
大学時代にはパロディ地口漫画、猫アニメ等々、『江戸風』『線』にこだわった作品を数々だしてみる。

革版画にも懲り、『東京』をテーマとした『東京地口呟猫六十三疋』革屏風を制作、また大学在学中打ち込んだ遍路をテーマとし、牛半裁をまるごと使用した大作、猫革版画『八十八ヶ所遍路猫地口』を制作。
大学卒業後は革製作会社に就職。そこで地口絵を用いた雑貨も少量ながら展開。
革仕事の傍ら筆を持ち、「猫ばっか」と言われながらもオリジナルの現代版戯色で描きつづけている。
魚屋蘭舞(ととやらんぶう)の名でも活動中。
>> 地口屋日記

略歴

「地口(じぐち)」の言葉をご存知でしょうか?
地口とは平たく言えば洒落。すなわち冗談、冗句、ジョーク。ジョークのこと。江戸式ジョークの一種を地口とよぶのです。 ジョークといえばアメリカンジョークが有名。どっこいアメリカンもびっくりのイケてるジョークが江戸には飛び交っていたのです。 ジョークと言ったら、爆笑のとっておきを期待するものですが、江戸モノは一味違ってきます。 一発爆笑はまずないと言ってよいでしょう。現代では解読すらままならないものも数多くみられますが、読めたところでうまくいって微笑程度、意味不明なものが多々存在します。 日々生きている中でフト思いついた「あ、ちょっと掛かってる」的なジョーク。大声での発表はイマイチながら、ちょっと知らせたい的なギャグ。そんなささやかな笑いを江戸っ子は競い合ったそうです。 ワタシがそんな地口と出会ったのは名画一勇斎国芳「東海道五十三疋」。猫大好き国芳のキュートな画にうっとり。 全然可愛くない猫にうっとり。こんなもろ猫描いてみたい。模写の月日は経ち、うっとり猫の近辺になにやら線があるのに気が付きました。それは崩れ文字の洒落でした。 最初の札には「日本橋」とありました。二本・・・? 何でしょ? 語訳を読めば「二本出汁」(にほんだし)・・・。 ああ、そういえば猫が鰹節みたいの二本持ってる。 「保土ヶ谷」札下には喉を掻いてる猫・・・「喉痒い」(のどかい)・・・。 もしや洒落? 国芳ってば、洒落? まさか、そんな。日本画なのに!!! まさかではありません。東海道・・・は地口をテーマとした立派な日本画なのでした。愚かなわたし、こんなテーマを見逃してはしゃいでいたとは! そうしてその面白いんだか面白くないんだかよくわかんないジョーク遊びにすっかり夢中。 大江戸ならぬ大東京を舞台とした現代地口を日々頭に巡らせているのです。